さて 今回はFUJIFILMのダブルフラッグシップ X-H2 と X-H2S の違いについて見ていきたいと思う。
2022年7月 先に登場したのがX-H2S。遅れること2ヶ月、2022年9月にX-H2が発売となった。
同じボディを採用しながらも高解像モデルのX-H2、ハイスピードモデルのX-H2Sとキャラクターは全く異なるものとなっている。
多少の価格差もあるとはいえ、このクラスのカメラを購入しようと思っている方にとっては、大きな障壁になる程ではないかもしれないが、同じ高い金額を支払うのだから、どちらが自分の用途に合ったカメラなのかシッカリ見極めたいところだ。
今回は、カメラのレビューではなく、カタログ上やスペック上の違いを主に取り上げ、どちらの機種がどんなユーザーにオススメかまで書いていきたいと思う。
フジフィルムX-H2とX-H2Sの違い
ボディの違い
前述した通り、ボディは2機種とも共通となる。
上下と全面、背面の4ピーズ構造。
防塵防滴・対低温構造のマグネシウム合金ボディを採用している。
強いて言えば、X-H2Sはボディ前面右上(モードダイヤルの下)あたりに『S』のマークが刻印されている。
X-H2とX-H2Sを外観で見分けるポイントはココしかないだろう。
ボタン配置も含め共通となっていることから、X-H2とX-H2Sの2台持ちでも 非常に使い勝手が良いだろう。
ただ、センサーを含め機能的にはかなりの違いが見えてくる。
センサーの違い
まずはセンサーだ。
2機種に搭載されるプロセッサーは同じだが、同じ第5世代とはいえ、センサーは全く異なるものとなっている。
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
プロセッサー | X-Processor 5 | X-Processor 5 |
センサー | X-Trans CMOS 5 HR | X-Trans CMOS 5 HS |
有効画素数 | 約4020万画素 | 約2616万画素 |
最大記録画素 | 7728×5152 | 6240×4160 |
フィルムシミュレーション | 19モード | 19モード |
APS-Cセンサーとして最高画素数を誇るX-Trans CMOS 5 HRを搭載するX-H2に対し、AFの合焦や連射処理の速度を高めたX-H2S。
搭載するプロセッサーは同じであれど、全く異なるキャラクターを持つ両者。
さらに掘り下げて違いを見ていこう。
シャッタースピードの違い
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
メカニカルシャッター | 15分~1/8000秒 | 15分~1/8000秒 |
電子シャッター | 15分~1/180000秒 | 15分~1/32000秒 |
電子先幕シャッター | 15分~1/8000秒 | 15分~1/8000秒 |
フラッシュ同調速度 | 1/250秒以下 | 1/250秒以下 |
メカニカルシャッターの性能は同じであるものの、電子シャッターでは大きな違いがあることが見て取れる。
X-H2は、1/180000秒という驚異的なシャッタースピードを誇り、X-H2Sとの比較では、約2.5段分拡張される。
晴天時やビーチ、ゲレンデといった、明るく照り返しの強い環境下でも、F1.0やF1.4といった低いF値を使えるだけでなく、水面に落ちる水滴などの一瞬を切り取るような撮影にも重宝することだろう。
X-H2ならNDフィルターの出番を減らすこともできそうだ。
ただしローリングシャッター耐性では、X-H2Sの方が優位だという。
この辺りは、実際のレビューを確認して検証していきたいと思う。
ISO感度の違い
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
常用ISO感度(静止画) | 125~12800 | 160~12800 |
拡張ISO感度(静止画) | 80~51200 | 80~51200 |
常用ISO感度(動画) | 125~12800 | 160~12800 |
拡張ISO感度(動画) | ~25600 | ~25600 |
ISOの上限は 両者同じであるものの、常用感度の下限値をX-H2では、さらに低く設定できるようになった。
先程のシャッタースピードも相まって、X-H2はより明るい場面で自分のイメージする設定を実現できるものになっているだろう。
また、この感度設定は動画にも有効で、ダイナミックレンジの広いF-logやF-log2でも、より低いISOを設定できるようになっている。
明るい大口径レンズでNDフィルターを使わなければ撮影できなかった場面でも、カメラの設定で対応できる場面も増えるだろう。
暗所耐性
一般的に高画素モデルは暗所耐性が弱いとされているが、X-H2の暗所性能はどうだろうか?
色々なレビューを見て回ったが、ISO6400までは普通に使えるレベル。
第4世代センサーのX-T4は、ISO3200くらいから若干ノイズが気になり始めるが、高画素モデルであるX-H2の方が暗所にも強いようだ。
AF/被写体認識の違い
被写体 | X-H2 | X-H2S |
---|---|---|
人物&瞳 | ◯ | ◯ |
動物 | ◯ | ◯ |
鳥 | ◯ | ◎ |
車 | ◯ | ◎ |
バイク&自転車 | ◯ | ◎ |
飛行機 | ◯ | ◎ |
電車 | ◯ | ◎ |
両者共に被写体検出AFを搭載しているものの、AFの速度と追従精度ではX-H2Sが優位になる。
X-H2もX-H2Sも同じアルゴリズムを採用し、安定したAF性能を有しているものの、裏面照射積層型センサーを搭載するX-H2Sの方がレスポンスは上だ。
特に動きが早い被写体に対してX-H2Sは力を発揮するという。
ソニーのAFは早いといった話をよく耳にすると思うが、ソニーのカメラの多くは積層型センサーを採用している。
実際に触った印象もソニーのAFに近い印象だった。
FUJIFILMのセンサーにもソニーの技術が採用されているはずなので納得の結果だ。
なお人物&瞳認識とその他の被写体検出は、別メニューで設定を行うため、排他利用となる。
スチル性能の違い
撮影画素数の他に大きな違いを挙げるとすれば、『ピクセルシフト』という高解像撮影モードだろう。
X-H2には、ピクセルシフトがXシリーズで初めて搭載された。
ボディ内手ブレ補正の機能を流用し、センサーを高い精度で動かし自動撮影することで、1億6000万画素に及ぶ超高解像な画像を生成することができる。
画像の生成には、専用のソフトウェア(Pixel Shift Combiner)が必要になるが、中盤センサーを超える画素数を擬似的とはいえ、作り出すことができるのは写真ユーザーにとっては魅力的な機能になるだろう。
もう一つ、X-H2特有の機能として『スムーススキンエフェクト』が存在する。
これは 人の肌を認識して、滑らかに映し出す機能だ。
X-H2は高画素・高画質がゆえに、毛穴など本来あまり描写してほしくない部分まで精細に描写してしまう。
目やまつ毛、髪の毛といった解像度を残したい部分の描写はそのままに、人の肌のみに自然なかたちでエフェクトをかけてくれる。
ポートレイトで積極的に活用したい機能になるだろう。
アスペクト比の違い
X-H2とX-H2Sでは、選択できるアスペクト比に違いがある。
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
搭載されるアスペクト比 | 4:3、3:2、16:9、1:1、5:4 | 3:2、16:9、1:1 |
X-H2は、GFXと同じアスペクト比が選択できるようにアップデートされた。
FUJIFILMのXシリーズは、画素数の都合上(画素数が足りない)、選択できるアスペクト比に制限があったが、40Mセンサーのであればピクセル数を残すことができるという判断だろう。
GFXと同じアスペクト比を選ぶことができるのは、X-H2の魅力の一つと言えるかもしれない。
連射性能の違い
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
電子シャッター | 20コマ/秒(1.29×クロップ) | 40コマ/秒 |
連続記録枚数(電子) | ロスレスRAW:95枚 | ロスレスRAW:170枚 |
メカシャッター | 15コマ/秒 | 15コマ/秒 |
連続記録枚数(メカ) | ロスレス非圧縮RAW:400枚 | ロスレス非圧縮RAW:1000枚以上 |
連射速度、連射枚数共にX-H2Sの方が優位と言える。
もちろんスピードを売りにしている機種なので、当然と言えば当然の結果だ。
被写体検出AFの優秀ときているので、動きものを撮影するユーザーにとっては、X-H2Sの方が魅力的に見えるのではないだろうか。
動画性能の違い
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
8K | 30p | ー |
6.2K | 30p | 30p |
4K | 60p | 60p |
4Kハイスピード | ー | 120p |
FHDハイスピード | 240p | 240p |
記録画素数 | 8K/6.2K/DCI4K HQ/4K HQ/DCI4K/4K/FHD(17:9)/FHD(16:9)/FHDハイスピード | 6.2K/DCI4K/4K/FHD(17:9)/FHD(16:9)/4Kハイスピード/FHDハイスピード |
撮影記録時間 | 約160分/8K30p(本体のみ) 約240分/8K30p(冷却ファン使用時) | 約240分(4K60p) |
F-log2 | 13+ストップ | 14+ストップ |
X-H2は動画撮影についても高画素センサーを活かした撮影が可能。
8Kで撮影した映像を4Kにすることで、解像感に優れた映像を記録することができる(8Kオーバーサンプリング)
X-H2のDCI4K HQや4K HQは、この8Kオーバーサンプリングで撮影することを指す。
一方 X-H2Sは、スピードを売りにするだけあり4K 120pという4Kハイスピードに対応してきた。
X-H2には搭載されていない機能であり、表現の幅を広げてくれそうだ。
撮影記録時間については、フォーマットが異なるので参考程度にしていただければと思うが、どちらも30分制限はなく撮影の自由度は高くなっている。
また F-log2の仕様についても若干の違いがある。
X-H2Sはセンサーとプロセッサーの合わせ技で14+ストップを実現しているのに対し、X-H2は13+ストップに留まる。
X-H2の40Mセンサーでは、高画素であるがゆえに14+ストップの実現は難しかったようだ。
それでも従来のF-log2が12+ストップだったので、どちらの機種もしっかり進化したと言える。
13+ストップと14+ストップの違いを感じるシーンも限られると思われることもあり、誤差レベルの違いと判断しても良いだろう。
デジタルズーム
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
デジタルズーム | ◯ | ー |
X-H2には、動画撮影時に使用できるデジタルズーム機能が搭載されている。
単焦点レンズを装着している場合でも、解像感を損なうことなく、最大2倍のズームが可能。
XF18-120mm F4などの電動ズームレンズとの組み合わせでは、レンズの光学ズーム域を超えたところからシームレスにデジタルズームに移行してくれる。
よくあるクロップではないため、等倍から2倍の間を自由に調整できるのも嬉しいポイントだ。
手ブレ補正
手ブレ補正に関しては、最大7.0段のボディ内手ブレ補正を搭載しており、両者に差は無い。
ハードウェアについても、バリアングル背面液晶、ファインダー、防塵防滴機能、シャッター耐久と違いは見受けられない。
価格の違い
最後に価格の違いを見ておこう。
X-H2 | X-H2S | |
---|---|---|
ボディ(フジフイルムモール) | 290,400円 | 346,500円 |
レンズキット(フジフイルムモール) | 363,000円 | ー |
ボディ(最安) | 262,000円前後 | 285,000円前後 |
レンズキット(最安) | 327,000円前後 |
X-H2Sはボディのみの販売。
X-H2はボディのみに加え、レンズキット(XF16-80mm F4)も用意されている。
非常に使い勝手も写りも良いレンズということも有り、このキットレンズは嬉しいポイントだろう。
X-H2の価格設定にも驚きだ。
一般的に高画素モデルは高価であることが多いが、X-H2はX-H2Sの価格を下回ってきた。
この価格でX-H2の魅力が更に増したようにも感じる。
価格でX-H2Sの購入に踏み切れなかったユーザーには、嬉しい知らせになったことは間違いないだろう。
X-H2・X-H2Sはどんな人にオススメ?
ここまで両者の違いに触れてきた。
X-H2とX-H2Sは、それぞれどんな人にオススメなのだろうか?
X-H2がオススメ | X-H2Sがオススメ | |
---|---|---|
写真撮影 | 風景撮影/星空撮影 ポートレート撮影 スナップ撮影 | 鉄道写真 野鳥/動物撮影 スポーツ撮影 |
動画撮影 | 高画質にこだわる | スローモーションを多様 |
やはり 高画素センサーの特性を活かした風景や星空、ポートレート撮影がX-H2の得意とするところになるだろう。
スナップで使っても豊かな表現をしてくれると思う。
X-H2SはAF-Cや連射を多様するするようなシーンで真価を発揮してくれそうだ。
迫ってくる列車の撮影や動きの読めない動物やスポーツ撮影でも高速AFが被写体をガッチリ追ってくれるだろう。
またX-H2Sは動画向きといった意見を目にすることもあるが、個人的には決してそうではないと思っている。
動画撮影の機能やスペック的なところを見ても、X-H2がX-H2Sに劣るという部分は少なく、むしろ高画質にこだわるのであればX-H2の方が利点は多い。
自分のスタイルや撮影シーンに合わせて、シッカリ吟味して選びたいところだ。
【まとめ】X-H2とX-H2Sの違い
今回は、FUJIFILMのダブルフラッグシップ X-H2とX-H2Sの違いを見てきたがいかがだっただろうか?
兄弟機とはいえ、シッカリと差別化されており、どちらを選ぶか悩ましいところだ。
許されるなら2機種とも所有したいところだが、なかなかお財布事情が許してくれない。
基本的には、自分の被写体が動きが多いか、動きが少ないかといったところが選択の分かれ目になってくるだろう。
ポートレートのような多少の動きや予測できる動きの中であれば、X-H2も問題なくAFを合わせてくれる。
一方でスポーツや動物などスピードもあり、予測できない動きをする被写体となるとX-H2Sの方が撮影に集中できるだろう。
とは言え、どちらもフラッグシップに相応しい性能と機能を有していることに間違いはない。
こうなると、最近までフラッグシップと言われてきたX-T4の後継機がどうなるのか非常に楽しみだ。